大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

新潟家庭裁判所長岡支部 昭和42年(家)2807号 審判

申立人 高水ユリ子(仮名)

相手方 高水好男(仮名)

主文

相手方は申立人母子が医療を受けるため申立人に対し相手方の警察共済組合員証を引き渡せ。

理由

申立人と相手方は、昭和三九年一二月一八日婚姻の届出をした夫婦であつて、その間に長男好幸(昭和四一年九月二七日生)があるが、相手方は昭和四一年四月頃肩書地(○○警察署○○駐在所)に転勤となり、申立人が初産のため実家に帰り出産し、その経過が悪く親許に世話になつて居るところ、同年一一月頃から申立人母子の生活費の仕送りを停止したので、何等の資産収入なき申立人は医療費や生活費殊に長男のミルク代にもこと欠く状態であるから、相手方は申立人に対し婚姻費用の分担として毎月相当額の金員を支払うよう調停して欲しいため本申立に及んだ次第であるというのである。

そこで当裁判所は二回に亘り調停委員会を開き調停を試みたけれども、相手方は申立人に対し相手方の許に同居することを認めず、申立人に対し○○市にある家で相手方の母および先妻との間の長男一男(昭和三六年四月二七日生)二男友二(昭和三八年三月一一日生)と同居生活を続けるよう要求するのみであるため、遂に当事者間に合意が成立する見込なく調停を打ち切り審判に移行することになつたものである。

次いで申立人は申立人母子が医療を受けるのにもこと欠くので、至急相手方の警察共済組合員証の交付を求めたく臨時の措置を講じて欲しいというのである。

以上の事実によれば、相手方は夫として妻子である申立人および長男好幸を当然扶養すべき義務があること明らかであり、しかも相手方が現職の警察官として前記○○駐在所に勤務中であることは相手方において認めて争わないところであるから、審判前の臨時必要な処分として、相手方に対し警察共済組合員証の引渡を命ずることとした。

よつて主文のように審判する。

(家事審判官 坪谷雄平)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例